賃料評価も可能です。 -賃料の鑑定評価について説明します。-

賃料評価も可能です。 -賃料の鑑定評価について説明します。-

不動産鑑定評価というと、土地やビルなどの価格を求めるだけだと思われているかもしれませんが、賃料の鑑定評価も行うことが可能です。

出来るというのは、私が個人的に言っているのではなく、不動産鑑定評価基準にも、賃料の鑑定評価について規定されています。

ですが、価格の鑑定評価と比較すると賃料の鑑定評価は、一般的には少ないものと思われます。

弊社は、賃料の鑑定評価は多い方と思っておりますが、それでも、ざっと件数割合でいうと、価格の鑑定評価 8割:賃料の鑑定評価 2割、という感じでしょうか。これは私の感覚ですので、不動産鑑定会社によって、変わってくるかもしれません。

ここで言う賃料とは、土地の賃料である地代と建物の賃料である家賃ということになり、それぞれについて、鑑定評価を行うことが可能です。

また、賃料の鑑定評価では、新規賃料と継続賃料があり、以下、それぞれについて説明します。

1.新規賃料

新規賃料は、名前を聞くと少し難しそうですが、そんなことはありません。

名前の通り新規に借りる際の賃料です。

説明をしてしまえば、それまでなのですが、もう少し詳しく説明致します。

例えば、一棟の賃貸マンションがあったとします。

その賃貸マンションに、空室が生じると、より厳密に云うと、解約予告が入居者から出されると、募集活動を開始することになります。

チラシには募集賃料が記載されていますが、その賃料は鑑定評価で決めたと思いますか。

絶対にないとは言えませんが、恐らく鑑定評価はしていないと思います。

なぜかと云えば、マンションの賃料は、相場から把握することが出来ますし、法律で、賃料を決めるのに鑑定評価を取るように決められてもおりません。

それは、事務所ビルでもあっても、同様です。

そうすると、新規賃料の鑑定評価は、どんな時に必要になるのか、ということになりますが、賃料の鑑定評価は、後述する継続賃料がほとんどで、新規賃料の鑑定評価はそれほど多くないと思っています。

ですが、同じマンションであってもマンションを一括で賃貸する場合、同様に、事務所の一括貸しなどの場合には、相場からは分かりにくいこともあります。

マンションを一括で賃貸する場合でしたら、簡便的に、各部屋の賃料を合計すればいいかもしれませんが、事務所を一括で賃貸する場合には、フロア毎で賃貸する場合とは異なり、共用部分も使用することが出来るようになりますから、参考にはなりますが、フロア毎の賃料を合計すればいい、という風にはなりません。

他に、パチンコ店やボーリング場、研究施設など、相場が分かりくい物件を賃貸する場合には、鑑定評価を活用することも考えられます。

私の手元にある「第13回実務修習 実務修習・指導要領テキスト(公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)」によると、家賃の新規賃料が求められる場合として、以下の3つが例示されています。

  • 「貸家及びその敷地」の新たな賃貸借契約の締結に際し、賃貸人による家賃設定の意思決定の参考に供する目的で鑑定評価が依頼される場面。
  • 特定優良賃貸住宅といった公的な家賃補助制度等の申請に際して適正な新規賃料による募集が要件となり、その証明として鑑定評価が依頼される場面。
  • 法人が所有する不動産をその役員が賃借する場合等で、税務上、適正な家賃への証明書類が必要となり、鑑定評価が依頼される場面。

なお、新規賃料の鑑定評価は、それほど多くないと触れましたが、継続賃料の鑑定評価を行う際、その過程で、新規賃料を求めることになるので、新規賃料の評価が全く行われていない、という訳ではありません。

2.継続賃料

継続賃料は、少しイメージが難しいかもしれません。

単語からは、難解そうに感じられる方も多いかと思います。

不動産鑑定評価基準によると、「継続賃料の鑑定評価額は、現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(以下「直近合意時点」という。)以降において、公租公課、土地及び建物価格、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の契約の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意の上決定するものである。」とあります。

継続賃料は、既に賃貸借契約を締結している当事者間で、相場賃料の変動等があった場合に、その変動等を反映させる為に求める賃料ということになります。

もう少しかみ砕いて説明しますと、契約締結以降、相場変動等があった場合にその変動を反映させる為の賃料、という言い方が出来るかと思います。

契約締結以降、例えば、相場の賃料が上がっていて、契約締結時の賃料と差異が生じている場合です。

どういう場面で、継続賃料の鑑定評価が必要になるかというと、先のとおり賃料を変更したい場合ですね。

新規賃料は、相場から見当が付くことが多いですが、継続賃料は、鑑定評価をしてみなければ分かりません。

この辺が、新規賃料よりも継続賃料の鑑定が多い理由になるのかと思います。

ここで誤解をして欲しくないのですが、継続賃料の鑑定をしないと、賃料を改定できない訳ではありません。

双方の話し合いによって、解決できるようでしたら、鑑定評価を取得する必要はありません。

ですが、鑑定評価書があった方が、有利な証拠となり、賃料鑑定交渉をスムーズに進められます。

弊社の賃料鑑定も、ほとんどが継続賃料です。

継続賃料は、鑑定評価の中でも、複雑な部類となり、作業量も膨大です。

また、訴訟となり裁判上の資料とされることも多く、作成には慎重を要することから、通常の鑑定評価よりも時間がかかります。

その為、必要な場合には、早目に発注をされた方がいいかと思います。

また、時間もかかるということは、鑑定料も高くなります。

先にも触れましたが、継続賃料の鑑定評価は、訴訟の場で使われることが多いので、実績が多く、信頼出来る鑑定会社にお願いすることも重要になってきます。

更に、裁判中に、相手方から質問が来て、それに回答する、相手方からも評価書が提出された場合には、それを精査する必要が生じる場合もありますので、そういった対応もしてくれるかどうかを確認しなければいけません。

3.まとめ

以上、賃料の鑑定評価について、まとめさせていただきました。

先にも触れましたが、賃料の鑑定評価は、価格の評価と比べると件数は少な目ですので、お願いする場合には、実績の多い鑑定会社にお願することが一つのポイントになるかと思います。

また、通常、継続賃料の鑑定評価となることが多く、その場合、裁判の資料となりますので、同様に、実績が多い鑑定会社に依頼された方が安心かと思います。

価格の鑑定評価よりも、時間がかかり、鑑定報酬は、価格の場合と比べて、高くなると述べさせていただきましたが、これにつきましては、別の機会に説明させていただきたいと思っております。

鑑定報酬につきましては、賃料の鑑定報酬についての記載はありませんが、こちらを参考にしていただければと思います。

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