不動産の価格を求める手法① 原価法(積算価格)について

不動産の価格を求める手法① 原価法(積算価格)について

不動産の価格は、どのように求めるかご存じでしょうか。

例えば、不動産を購入する場合でしたら、チラシやネット広告に記載されている物件価格が妥当かどうか知りたくはないでしょうか。

価格については、不動産業者に任せっきり、というのが実際は多いのかもしれません。

ですが、先のとおり、不動産を購入する場合でしたら、いくつか物件を比較して決定することも多いかと思いますが、それぞれの物件の価格が割高なのか、割安なのか、適正水準なのかどうか分かった方が、購入の判断をする際に、より合理的に出来るのではないかと思われます。

でも、不動産の価格を求める方法(手法)というと難しいのではないか、と敬遠される方も多いかもしれませんが、なるべく分かりやすく解説しますので、理解していただき、お役に立てたら嬉しく思います。

なお、不動産の価格を求める手法は、3手法ありますが、タイトルの通り、今回は、原価法について解説します。

ちなみに、残り2手法は、取引事例比較法、収益還元法になります。

この2手法につきましても、別の機会に解説させていただきたいと思っております。

 

1.原価法の定義

不動産鑑定評価基準では、以下のとおり定義されています。

原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という。)

2つのステップからなることがお分かりになるかと思います。

2つのステップとは、「再調達原価を求め」、次に、「減価修正を行う」ですね。

少し嚙み砕いて説明します。

築後10年経過した木造の戸建住宅(中古住宅)を想像していただきたいのですが、この戸建住宅を現時点において新しく作った場合の価格(再調達原価)を、まず求めます。

次に、築後10年経過していますので、10年分の減価(減価修正)をします。

どうでしょうか。上記の説明でしたら、原価法をイメージし易いかと思います。

では、少し詳しく見ていきます。

(1)再調達原価

先のとおり木造の戸建住宅(中古住宅)を例に、以下説明していきます。

事務所ビルでも工場、倉庫等でも同様になります。

戸建住宅ですので、土地と建物に分けることが出来ます。

先に、建物から説明します。

建物の再調達原価については、簡単ですね。

今建っている建物は中古ですが、その建物を、現時点(価格時点)に新しく作ることを想定します。

例えば、10年前に建築した時は、15,000,000円だったとすると、現在は、建築費が上がっていますので、同じ建物を今建てることを想定し、18,000,000円になったとします。
これが、建物の再調達原価になります。

次に、土地です。

ここは、少し難しいところになるのですが、建物を新しく作るのはいいと思いますが、土地を新しく作ることは出来るのでしょうか。

そもそも土地は既にありますので、通常は、新しく作ることは出来ません(埋立地などは作れますが)。

なので、土地については、原価法は適用することが出来ませんので、別の手法で求めます。

ここが少し難しいところです。

別の手法とは、取引事例比較法です。

取引事例比較法については、機会を改めて説明致しますが、イメージとしては、周辺の成約事例から、駅からの距離、環境、道路幅員、容積率等を比較して、土地価格を求める手法です。

一般的には、駅に近い方が土地価格は高くなりますし、道路幅員が広い方が土地価格は高くなります。

簡単に言ってしまえば、事例から比較して、価格を求めることになります。

恐らく、皆さんも、不動産に限らず何かを購入される際に、似たようなものを比較検討して、購入を決定していると思いますので、イメージは付きやすいかと思います。

また、簡便的には、公示価格、基準地価格、相続税路線価からも概算の土地価格を求めることが可能です。これにつきましても、後日、改めて説明致します。

以上から、戸建住宅の再調達原価は、土地価格を取引事例比較法で求め、建物価格は原価法で求めて、これを合算して、戸建住宅の再調達原価が求められます。

ここを乗り越えていただければ、後は、それ程難しくはないかと思います。

(2)減価修正

次に、減価修正です。

土地は、通常、減価しませんので、土地についての減価修正は、通常行わないことが多いです。

ここも少し難しい話になりますが、地震や洪水などで、土地に減価が生じているということは、勿論ありますが、ここでは考慮外とさせて下さい。

建物については、木造住宅でしたら、通常30年程度で価値はゼロとなりますので、ここでは耐用年数を30年とします。

10年経過しているとすると、10/30の減価が生じていることになります。よって、この10/30に相当する減価をします。

土地価格に10/30の減価をした建物価格を合算して、積算価格が求められます。

2.具体例

では、具体的な計算例を、見て行きたいと思います。

具体例として、先と同様に、築後10年を経過した木造の戸建住宅(土地100㎡、建物150㎡)とします。

まず、再調達原価を求めます。

最初は、土地の再調達原価です。

先に、説明させていただきましたが、土地については、取引事例比較法で求めますが、今回は、簡便的に周辺の地価公示地、基準地、路線価から、1㎡あたり300,000円とし、総額30,000,000円(100㎡×300,000円/㎡)と求めます。

次は、建物の再調達原価です。

木造ですので、1㎡当たり180,000円とし、27,000,000円(150㎡×180,000円/㎡)と求められます。

土地と建物の再調達原価を合算して、土地・建物の再調達原価が57,000,000円(30,000,000円+27,000,000円)と求められます。

次に、減価修正です。

土地は、減価しませんので、30,000,000円のままです。

建物は、木造ですので、耐用年数を30年とし、築後10年経過していますので、10年分の減価が生じていますので、これを控除します。

これを計算すると、27,000,000円×(30-10)/30=18,000,000円となります。

なお、減価修正には、耐用年数に基づく方法と観察減価法の2つの方法があり、上記は、耐用年数に基づく方法になります。観察減価法は、今回は割愛しますが、建物を見て、経年以上の減価が認められる場合には、観察減価法も併用する必要があります。

土地価格の30,000,000円と建物価格の18,000,000円を合算して、48,000,000円と積算価格が求められます。

3.取壊最有効

取壊最有効についても、建物が古い場合には、参考になりますので、解説させて下さい。

タイトルだけ見ると、何だかよく分からないかもしれませんが、それ程難しいことではありません。

建物が古過ぎるなど、現在の建物を使うよりは、取壊した方がいいような場合もあります。

これを不動産鑑定用語にはなりますが、取壊最有効といいます。

この場合には、土地価格から、建物取壊費用を控除した価格が求める価格となります。

4.まとめ

原価法について、説明しました。

考え方としては、それほど難しくはないと思われますが、土地価格をどのように求めるのか、建物の再調達原価はいくらなのか(今回は、木造で180,000円/㎡としています。)、といったところが、実際に価格を求める場合に、難しいところかもしれません。

長くなり過ぎますので、今回は省略しましたが、機を改めて、分かりやすく説明させていただければと思っております。

最後に一つ、意見を述べさせていただきたいのですが、原価法は、収益物件、投資物件の価格の検証に、とても有益な手法と考えています。

通常、収益物件の価格は利回りで決まっていますが(この場合の価格を収益価格と云います)、この場合の物件価格や利回りは、満室想定だったりします。

また、現在の賃貸条件に基づいていても、割高な賃料で入居しているテナントがいたり、現在は満室稼働であったとしても、テナントが退去してしまえば、その前提は、崩れてしまいます。

原価法による積算価格は、物件そのものの価格ですので、このようなテナントの状況に左右されない価格です。

ですので、利回りばかりでなく、原価法による積算価格による検証も、とても大事だと思っております。

皆さまの物件購入、不動産投資にお役に立てるよう、今後も情報発信をしていきます。

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