鑑定報酬はいくらなのか。 -不動産鑑定にかかる報酬についてまとめてみたいと思います。-
不動産鑑定が必要になった時、鑑定報酬(鑑定料)がいくらかかるのかは、気になるところだと思います。
そもそもの話としまして、どんな時に鑑定評価が必要になるのか、というのも関心があるかと思われますが、これにつきましては、別の機会に整理させていただきたいと思います。
鑑定報酬は、案件によっても異なりますし、不動産鑑定業者によっても異なってきますので、報酬の相場がどれくらいなのかは、分かりにくいかもしれません。
不動産鑑定評価が必要になった際に、鑑定報酬(鑑定料)について、参考になるよう、以下説明していきたいと思います。
1.不動産鑑定報酬の現状
例えば、不動産売買の仲介手数料(上限)は、「物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税」のように決まっていますが、鑑定報酬につきましては、このような決まりはありません。
ですので、不動産鑑定業者毎に異なっている、というのが現状となります。
但し、「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」というのがあります。
名前の通り道路用地の買収などの公共事業に関連する不動産鑑定の場合に、使用されるもので、評価額によって、鑑定報酬が定められています
ですが、通常の鑑定評価の場合には、この制限を受けるものではありません。
従いまして、ここでは、「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」については触れません。
恐らく、「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」の方が、一般的な鑑定報酬よりも高額になる場合が多いように思います。
2.不動産鑑定報酬の相場はどれぐらいか
ネットで調べてみると、20万円(税別)~というのが多いようです。
この20万円を基準に、土地の大きさ、建物の有無などにより、50万円(税別)ぐらいまでの幅があるというのが、相場のようです。
私の感覚としても、通常の案件でしたら、20~50万円(税別)という感覚を持っています。
そうだとしましても、随分と幅があります。
どうしてこのように差が生じるのでしょうか。
以下、弊社の場合を例に取りまして、解説致します。
3.弊社の場合
弊社の報酬基準を以下、掲載致します。
(1)土地 | 200,000円 ~ |
(2)土地+建物(戸建住宅) | 250,000円 ~ |
(3)土地+建物(戸建住宅以外※) | 300,000円 ~ |
(4)マンションの一室 | 300,000円 ~ |
金額は税抜きになります。
※共同住宅(アパート、マンション一棟)、ビル、商業施設、工場など
最初に説明させていただきますが、上記金額は下限の金額になります。例えば、(1)土地の場合には、規模が大きくなれば、鑑定報酬も高くなります。
勿論、規模以外の条件によっても、鑑定報酬は変わってきます。
ざっくりですが、いずれの場合においても、鑑定報酬は、通常30~40万円(税抜)ぐらいになることが多いです。
以下、それぞれについて説明していきます。
(1)土地
下限で20万円(税抜)としております。
想定しているのは、100㎡ぐらいの土地です。
土地の場合には、先にも述べましたが、規模が大きくなるにつれ、鑑定報酬も高くなります。
その土地にどのような建物を建てるのがいいのか(最有効使用)を検討するのに、図面が必要になってくることもありますので、その場合には、建築士にお願いする図面代が必要になってきます。
大規模な土地の場合には、区画割も想定する必要があり、これも図面が必要になります。
また、一般的に、規模が大きくなるほど、調査する事項も増えてきますので、その分報酬も高くなってしまいます。
(2)土地+建物(戸建住宅)
戸建住宅の場合には、概ね上記の下限金額で収まることが多いように思います。
ですが、敷地上に建物が複数建っている場合などは、鑑定報酬のプラス要因となります。
(3)土地+建物(戸建住宅以外)
共同住宅(アパート、マンション一棟)、ビル、商業施設、工場などです。
(2)よりも高額となっていますが、一般的に、(2)よりも規模が大きいこと、調べることも増えることなどから、(2)よりも高額の報酬となることが多いです。
例えば、ビルの場合で、賃貸中のオフィスビルでしたら、個々のテナントの賃貸借契約を確認する必要もあります。
この場合も、規模(土地、建物ともに)が大きくなりますと、一般的に、報酬は高くなります。
先のオフィスビルを例に取りますと、テナント数が5のオフィスビルとテナント数が20のオフィスビルでは、作業量が随分と変わってきます。
(4)マンションの一室
(2)の戸建住宅とマンションの一室で、どうして金額が異なるのか、と不信に思われたでしょうか。
マンションの一室が高額になるのは、戸建住宅よりも鑑定に手数を要するからなのです。
少し専門的な話になりますが、鑑定評価では、原則3手法を適用します。この内、原価法は、マンションの一室の場合、戸建住宅よりも労力を要します。
マンションの原価法は、まず、マンション全体の価格を求めて、次に、マンション一室の価格を求めますので、マンション一室の価格を求める分だけ、手数が増えます。また、マンションは、戸建住宅よりも、土地の規模が大きいことが通常です。
4.他に報酬に影響を与えること
種類別に報酬を見てきましたが、報酬はこれ以外の要因によっても異なってきます。
(1)期間
弊社では、通常、成果品の提出まで、鑑定に必要な資料が揃ってから、3週間程度とお話させていただいています。
ですが、これを、例えば2週間でやって欲しい、ということになりましたら、要手数ということで追加料金をいただくことになります。
他の仕事の受注状況もありますので、必ずしも、提出期限を早められる訳ではなく、対応が困難な場合には、お断りさせていただくこともございます。
(2)目的
鑑定評価書の使用目的によっても異なってきます。
訴訟の資料として利用される場合には、より精緻な評価が必要となりますし、裁判手続きの中で、質問を受けたりすることもありますので、追加料金が必要となります。
また、証券化を目的する場合には、収益還元法において、DCF法を適用する必要があることから、同様に追加料金が必要となります。
(3)借地権、限定価格、過去時点
土地が借地権の場合には、通常の土地と比較して、調べることも増え、時間を要しますので、報酬は、単なる土地(更地)よりも、高くなります。
また、限定価格を求める必要がある場合も、追加料金をいただくことになります。
限定価格については、別ブログで解説していますので、こちらを参考にしてください。
限定価格は、簡単な例で説明しますと、隣地を取得するような場合です。
隣地を取得することによって、形状が良くなるような場合には、通常の相場よりも高く買っても採算が取れますので、その分高く買っても大丈夫な価格を限定価格といいます。
また、先の借地権を例に取りますと、地主(底地人)が借地権を取得する場合にも限定価格となる場合があります。
他にも、過去時点の鑑定評価の場合ですと、資料収集などに、通常よりも難易度が高くなりますので、追加料金をお願いさせていただいております。
(4)旅費、宿泊代
遠隔地の場合には、旅費、宿泊代をお願いしております。
(5)割引となるケース
上記は、追加料金の話ばかりでしたが、割引となる場合もあります。
例えば、近隣で複数の物件をご依頼いただいた場合、過去に評価をさせていただいた物件を再評価する場合には、割引をすることが可能です。
また、継続的にご依頼頂ける場合にも、割引を検討することは出来ます。
5.簡易評価の場合
いままで説明させていただいたのは、正式な鑑定評価(不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価)についての鑑定報酬となります。
依頼目的によっては、正式な鑑定評価を簡略化したもの(不動産鑑定評価基準に則っていない価格等調査)でもいい場合があります。
簡略化していますので、当然、報酬も正式な鑑定評価よりも安くすみます。
以下、不動産鑑定評価基準に則っていない価格等調査(以下、「簡易評価」と称します)の場合の報酬について、説明します
なお、簡易評価については、こちらで解説していますので、参考にしていただければと思います。
この場合の報酬は、先に掲載させていただいた表の50%~70%程度が報酬の目安になります。
簡易評価の場合、どこを簡略化するのか等で、作業量も異なってきますので、一概にいくらとは言い難いのですが、目安として上記のとおりとさせていただいております。
下限である正式な鑑定評価の半額程度というイメージは、例えば、土地(更地)の場合に、取引事例比較法の1手法のみを適用し、報告書の記載についても、正式な鑑定評価書よりも、簡略化させていただいた場合です。
ご依頼の内容によっては、あまり簡略化が出来ないような場合もありますので、このような場合には、正式な鑑定評価の報酬に近くなっていく(70%以上になる)こともあり得ます。
簡易評価の場合には、まずは、依頼目的等をお聞きし、それにあった作業内容となりますので、一概に報酬はいくらと、言いにくいところもあります。
ですので、先の正式な鑑定評価の場合の50%~70%程度、というのを目安としていただければと思います。
なお、机上(現地に行かない)でいい場合には、もう少し報酬を下げることも可能です。
6.まとめ
鑑定評価が必要になりましたら、まずは見積もりをお願いした方がいいでしょう。
弊社でしたら、見積もりは無料です。
不動産については、同じものは決してありませんので、鑑定報酬も案件によって異なってきます。
見積もりについて、一つ注意点を上げさせていただきますと、複数社にお願いすると、一番安い金額の不動産鑑定会社にお願いしたくなるかもしれません。
勿論、費用が安いことにこしたことはありません。
ですが、不動産鑑定士によって、得意している地域、案件なども異なってくることもあります。
また、評価書提出後のアフターフォローなどもあります。
単に、費用だけで決めるのではなく、色々と話を聞くなどして、判断することが重要かと思います。
以上、説明させていただいたのは、価格を求める場合の鑑定評価報酬になります。
鑑定評価では、賃料の鑑定評価も出来ますので、賃料の鑑定評価の場合の報酬については、後日、追記したいと思います。