令和5年都道府県地価調査の概要について、全般的な傾向、今回の特徴を交えて説明します。
先月19日に、令和5年都道府県地価調査が発表されました。
発表後、少し間が空いてしまいましたが、その概要について説明をしていきたいと思います。
今回の地価調査の特徴を一言で述べるとしましたら、半導体、ということになるのかと思います。
その理由は、以下読み進めていただければと思います。
地価調査は、毎年7月1日時点の基準地の1㎡当たりの価格です。
ご存じの方は、多いかと思いますが、似たものに、地価公示があり、こちらは、毎年1月1日時点の価格となります。令和5年地価公示は、今年の3月23日に発表されています。
千歳市は、住宅地において、変動率上位10位のうち5地点、商業地においては、上位10位のうち3地点を占めています。
1.全般的な傾向
上記は、国土交通省の令和5年都道府県地価調査の概要です。なお、以下のグラフ、図等は、特段の注記がない限り、同資料からの引用です。(オレンジ線の囲みは、筆者加筆。)
上記表は、変動率となります。
同概要によると、全体的な特徴として、「新型コロナの影響で弱含んでいた地価は、景気が緩やかに回復する中、地域や用途により差があるものの、三大都市圏を中心に上昇が拡大するとともに、地方圏においても住宅地、商業地ともに平均で上昇に転じるなど、地価の回復傾向が全国的に進んだ。」としています。
上表を見ると、R5年では、全て(全用途平均、住宅地、商業地、全国、三大都市圏、東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方圏、地方四市、その他)において、前年よりも、上昇幅は拡大しています。(地方圏のその他うち、全用途平均、住宅地は、下落幅の縮小となっている。)
オレンジ線で囲ったのは、R元年よりも、上昇率が縮小している地域です。全用途平均では大阪圏、住宅地にはなく、商業地では地方圏地方四市が該当します。
R元年は、新型コロナウイルス感染症の流行前であり、オレンジ線で囲ったものは、新型コロナウイルス感染症流行前には戻っておらず、今だ新型コロナウイルス感染症の影響下にあるものと推測されます。
一方、住宅地では、全てR元年よりも上昇率が拡大しており、新型コロナウイルス感染症による新しい生活スタイルの影響等により、その需要は、堅調に推移していることが伺えます。
他には、R5年において、住宅地の地方圏その他では、マイナスとなっていますが、マイナスとなっているのは、これのみとなっています。マイナスは、前年よりも大幅に減少しています。
2.変動率上位
住宅地の変動率上位10位は、次のとおりです。
1位の地点の上昇率は、30.7%、10位の地点は、26.3%となっています。
北海道と沖縄のみで、11地点(10位は同率で2地点のため)の内、9地点は北海道で、更に、9地点の内、5地点は千歳市となっています。
千歳市は、 新千歳空港があり、国立公園支笏湖もあります。
千歳市の上昇の理由については、ラピダス進出の影響と考えられます。
Rapidus株式会社は、東京都千代田区に本社を置く、半導体メーカーで日本の主要企業8社の支援を受けて令和4年(2022年)8月に設立されました。
千歳市に工場を建設することを発表しています。
5位は沖縄の恩納村、9位は宮古島となっていますが、コロナによる移動制限もなくなり、移住目的、別荘需要により、上昇している模様です。
恩納村タイガービーチ
商業地の変動率上位10位は次のとおりです。
商業地においても、住宅地とほぼ同様の傾向が伺え、北海道の地点が6地点を占め、その半分は千歳市となっています。
1位、6位、10位となっている熊本県菊池郡は、台湾TSMCの進出の影響です。
菊池郡は、大津町と菊陽町の2つの町からなります。熊本空港を有し、千歳市と似てますね。
7位の白馬村は、インバウンドの回復により、外国人向けホテルや高級貸別荘の需要増により上昇しています。
白馬村
住宅地、商業地ともに、いずれも半導体工場の影響というのは興味深いです。
3.変動率下位
次は変動率下位です。住宅地、商業地の順になります。
特徴としましては、北海道が多いということが挙げられるかと思います。
住宅地、商業地ともに、石川県の珠洲市が入っていますが、今年5月の地震(令和5年奥能登地震)の影響でしょうか。被災された方には、心からお見舞い申し上げます。
4.まとめ
令和5年地価調査においては、新型コロナウィルス感染症の影響から脱しつつあり、地価の上昇、回復傾向が顕著となっています。
上昇率の上位となっている地点については、半導体工場の進出、コロナによる移動制限の緩和、インバウンド需要の回復が主な理由となっています。
世界的な金融引締めによる影響、中国経済の先行懸念、物価高の影響等、不安定要因もあり、今後も上昇傾向が続いていくかどうかは、判断が難しいところもあります。
次回は、来年3月に、令和6年地価公示が発表されましたら、また解説をしたいと思います。